犬の椎間板ヘルニアとは?症状や原因、治療方法を獣医師監修で解説

最近「歩き方がおかしい」「抱き上げると鳴く」「ジャンプを嫌がる」など、愛犬にいつもと違う様子が見られたら、犬の椎間板ヘルニアかもしれません。
特にダックスフンドのような胴長・短足の犬種に多くみられ、放置すると歩けなくなることもある病気です。
本記事では、犬の椎間板ヘルニアの基礎知識として主な症状や原因、なりやすい犬種、グレード別の治療方法や予防方法までを獣医師監修でわかりやすく解説します。
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犬の椎間板ヘルニアとは

椎間板ヘルニアは、犬に発症する代表的な神経疾患のひとつで、背骨の周辺で起こる病気です。
発症の仕組みによって、大きく2つのタイプに分けられます。
ここでは、椎間板ヘルニアがどのような病気なのか、その仕組みと2つのタイプについて解説します。
背骨にあるクッションが変性して、神経を圧迫する病気
椎間板ヘルニアは、背骨の骨と骨の間にある「椎間板」が変性し飛び出して、近くを通る神経(脊髄)を圧迫する病気です。
椎間板は、ゼリー状の「髄核(ずいかく)」と、それを包む「線維輪(せんいりん)」という組織からなり、運動時の衝撃を吸収するクッションのような役割を持っています。
何らかの原因でこの椎間板が変形し、背骨の神経を圧迫すると、痛みや麻痺といった症状が現れます。
ハンセン1型とハンセン2型の2つのタイプがある
椎間板ヘルニアは、発症の仕組みによって「ハンセン1型」と「ハンセン2型」の2タイプに分類されます。
タイプによって発症しやすい年齢や進行のスピード、治療方針が異なるため、それぞれの特徴を理解することが大切です。
- ハンセン1型
- ハンセン2型
ハンセン1型は、椎間板の中身である髄核が飛び出して、神経を圧迫するタイプです。
遺伝的に髄核が変性しやすい犬種「軟骨異栄養性犬種(なんこついえいようせいけんしゅ)」に多く、若齢(3~6歳ごろ)で突然発症することが多いのが特徴です。
ハンセン2型は、加齢により線維輪が変性し、分厚くなって神経を圧迫するタイプです。
高齢の犬に多く、数ヵ月から数年かけてゆっくり進行することが多いとされています。
犬の椎間板ヘルニアの主な症状

犬の椎間板ヘルニアは、進行の程度によって現れる症状が異なります。
症状が進行すると、神経への圧迫が強くなり、歩行や排泄にも影響が出ることがあります。
発症から治療までの時間が早いほど予後がよいとされているため、以下のような様子が見られたら、早めに動物病院で受診してください。
椎間板ヘルニアによって見られる主な症状
| 主な症状 |
初期の様子 |
|
進行すると見られる様子 |
|
椎間板ヘルニアになりやすい犬種

ハンセン1型の椎間板ヘルニアは、遺伝的要因により、ダックスフンドやコーギーなどの犬種に多く見られるのが特徴です。
これらの犬種は「軟骨異栄養性犬種」と呼ばれ、遺伝的に若いうちから椎間板が変性しやすい体質を持っています。
<主な軟骨異栄養性犬種>
- ミニチュア・ダックスフンド
- ウェルシュ・コーギー
- フレンチ・ブルドッグ
- シー・ズー
- ビーグル など
これらの犬種では、早ければ2~3歳ごろから椎間板の変性が始まり、3~6歳で発症することもあります。
そのため、軟骨異栄養性犬種を飼育している場合は、若いうちから背骨に負担をかけない生活環境を整えることが大切です。
椎間板ヘルニアになりやすい原因

犬の椎間板ヘルニアは、遺伝的要因のほかに、加齢や肥満、日常生活の環境などによって発症リスクが高まることがあります。複数の要因が重なって発症するケースも少なくありません。
ここでは、遺伝的要因以外で、椎間板ヘルニアを引き起こす主な原因について解説します。
加齢による椎間板の変性
椎間板は、年齢を重ねるとともに弾力性が失われ、変性しやすくなります。
弾力性が低下した椎間板は変性して厚くなり、神経を圧迫することでハンセン2型の椎間板ヘルニアを引き起こします。
ハンセン2型は高齢の犬に多く、加齢に伴ってゆっくりと進行するのが特徴です。
肥満による背骨への負担
体重が増えると、背骨や椎間板にかかる負担が大きくなり、椎間板ヘルニアの発症リスクが高まります。
特に胴長の犬種は、構造上、背骨にかかる負荷が大きくなりやすいため、肥満による影響を受けやすい傾向があります。
滑りやすい床や段差などの生活環境
フローリングなど滑りやすい床での生活や、階段の上り下り、ソファからの飛び降りといった日常動作は、椎間板に強い衝撃を与えます。
これらの動作が繰り返されることで、椎間板にダメージが蓄積し、椎間板ヘルニアの発症や悪化につながる可能性があります。
犬の椎間板ヘルニアのグレードと治療方法

犬の椎間板ヘルニアは、症状の重さによって5段階のグレードに分類されます。
グレードが上がるほど重症で、治療方針も変わります。
ここでは、グレード別の状態と治療内容、内科治療・外科治療の具体的な方法、そして新たな治療の選択肢として注目される再生医療について解説します。
グレード別の状態と推奨される治療内容
椎間板ヘルニアにおけるグレード1~5の特徴と、推奨される治療内容は以下のとおりです。
一般的に、グレード1~2の初期段階では、運動制限や投薬などの内科治療で様子を見ます。
しかし、グレード3以上になると神経の圧迫が強く、早期の外科治療が推奨されます。
椎間板ヘルニアのグレードと対応
グレード | 主な症状 | 推奨される治療内容 |
グレード1(軽度) | 痛みのみ、歩行は正常 | 安静・投薬による内科治療で経過を観察する |
グレード2(中度) | 足がもつれる、ふらつきながら歩ける | 内科治療が中心。改善が見られなければ外科治療も検討する |
グレード3(やや重度) | 足が麻痺して思うように動かせず、立ち上がれなかったり、前足だけで歩いたりする | 外科治療が強く推奨される |
グレード4(重度) | 後ろ足が完全に麻痺し、排尿のコントロールもできない。強い痛みの刺激には反応する | 早急な外科治療が必要 |
グレード5(最重度) | 後ろ足が完全に麻痺し、痛みの感覚もなくなる | 緊急の外科治療が必要 |
内科治療と家庭でのケア方法
内科治療は、症状が比較的軽度の場合や、外科治療が難しい場合に選択されます。
具体的な内容は以下のとおりです。
- 投薬
- ケージレスト
- リハビリ
痛み止めや炎症を抑える薬(非ステロイド性抗炎症薬など)を使用し、自然な回復を待ちます。
ケージレストとは、ケージやサークルの中で安静に過ごし、運動を制限する方法です。
椎間板ヘルニアの内科治療では、数週間にわたって安静に過ごすことが最も重要とされています。
動き回ることで悪化する可能性があるため、ケージ内で静かに過ごせる環境を整えましょう。
獣医師の指導のもとで、マッサージや軽い運動などのリハビリを取り入れ、筋肉の衰えを防ぎます。
外科治療と費用相場
外科治療では、飛び出した椎間板を取り除き、神経への圧迫を解消するために手術を行います。
主にグレード3以上、または内科治療で改善が見られない場合に選択される治療方法です。
費用相場は、検査・手術・入院を含めて30万~50万円程度が目安です。
なお、動物病院や症状の重さ、入院期間などによって金額は大きく変動します。
事前に獣医師と費用や術後のケアについて十分に相談しておくことをおすすめします。
新たな治療方法として期待される再生医療
近年、椎間板ヘルニアの新しい治療方法として、幹細胞を使った再生医療が注目されています。
再生医療は、損傷した神経の回復をサポートする治療方法で、他の治療で効果がみられない場合や、手術が難しい症例への適用が期待されています。
ただし、対応できる動物病院は限られるため、希望する場合は事前に対応の可否を確認しておきましょう。
犬の椎間板ヘルニアの予防方法

犬の椎間板ヘルニアは、遺伝的な要因が関係するケースもあるため、発症を完全に防ぐことは難しい病気です。
しかし、家庭での工夫やケアによって、発症リスクを下げたり症状の進行を遅らせたりすることが期待できます。
ここでは、家庭でできる具体的な予防方法について解説します。
滑り止めや段差対策など住まいの見直し
椎間板への衝撃を減らすためには、住まいの環境を整えることが効果的です。
以下のような対策を取り入れましょう。
<住まいの見直しのポイント>
- 床に滑り止めマットやカーペットを敷く
- スロープやステップを設置する
- 階段の上り下りはできるだけ抱っこする
フローリングには、滑り止めマットやカーペットを敷きましょう。
ペット用滑り止めワックスを定期的に使用することも有効です。
ソファやベッドなど、犬が日常的に上り下りする家具の横には、スロープやステップを設置しましょう。
階段の上り下りによる移動はできるだけ避け、抱っこで移動させることをおすすめします。
抱っこの際は、背中が床と平行になるよう体全体を支えてください。
体重管理と無理のない運動
肥満予防と筋力維持は、家庭で取り組める効果的な対策です。以下のポイントを意識しましょう。
<体重管理と運動のポイント>
- 適正体重を維持する
- 適度な運動を取り入れる
- 二足立ちや激しいジャンプを控える
定期的に体重を測り、獣医師と相談しながら食事内容を見直しましょう。
筋肉は背骨を支える重要な役割を果たします。
散歩などの軽い運動を日常的に取り入れ、背中や足腰の筋肉を保ちましょう。
緩い上り坂を歩くこともおすすめです。
二足で立つ姿勢や高いところからのジャンプは、背骨に大きな負担をかけるため、日頃から控えさせるようにしましょう。
犬の椎間板ヘルニアは早期発見と日常のケアがポイント
犬の椎間板ヘルニアは、軽度であっても放置すると進行し、麻痺などの重い症状を引き起こすことがあります。
発症から治療までの時間が早いほど予後がよいとされているため、早期発見と適切な治療が、愛犬の負担を軽くするポイントです。
抱き上げると鳴く、歩き方がおかしい、ジャンプを嫌がるといった様子が見られたら、早めに動物病院で受診しましょう。
また、椎間板ヘルニアの予防に向けて、滑り止め対策や体重管理などを行い、愛犬の健康を守りましょう。
よくある質問
Q. 犬の椎間板ヘルニアの手術費用はどのくらいですか?
椎間板ヘルニアは、グレード3以上になると外科治療が推奨されます。
手術費用は犬のサイズや動物病院、症状の重さによって異なりますが、検査・手術・入院を含めて30万~50万円程度が目安です。
なお、入院期間や手術内容によっても変動します。
詳しくは、以下の項目をご参照ください。
Q. 椎間板ヘルニアになった犬は散歩してもいいですか?
椎間板ヘルニアの治療中は、原則として運動を制限する「ケージレスト」が必要です。
自己判断で散歩を再開すると、症状が悪化する可能性があります。
散歩を再開するタイミングや運動量については、必ず獣医師の指示にしたがいましょう。
詳しくは、以下の項目をご参照ください。
Q. 椎間板ヘルニアは自然に治りますか?
犬の椎間板ヘルニアは、自然に治ることはほとんどありません。
放置すると進行し、麻痺など重い症状を引き起こす可能性があるため、早めの対応が必要です。
抱き上げると鳴く、歩き方がおかしいといった様子が繰り返し見られる場合は、早めに動物病院で受診することをおすすめします。
詳しくは、以下の項目をご参照ください。
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