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犬の下痢の原因は?病院に連れていく基準や下痢がゼリー状のときの対処法を獣医師が解説

公開日:2021.07.12 最終更新日:2023.04.27

病院へ行くべきかどうか、迷うことも多い愛犬の下痢。軽度から重い病気が潜むものまで様々なケースがあります。

1.下痢がひどく発熱や嘔吐を伴う場合は、重度の膵炎や胃腸炎、感染症などの恐れがあるため動物病院へ

2.下痢が3日以上続く、治っても再発する場合も速やかに動物病院へ

3.下痢以外は元気であれば一過性の場合が多いので、1~2日様子を見る


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犬の下痢って?

犬の下痢とは

犬の下痢は、小腸か大腸かの異常で状態が違い、軟便、水様便など水分量によって区別されます。

 

「小腸性下痢」は軟便や水様便などさまざまで、回数は変わらず量が増えます。続くと体重が減り、嘔吐も伴うと重症化する恐れが。

色が黒い場合は小腸で出血の可能性があります。

 

「大腸性下痢」は粘液混じりの軟便が多く、頻回になり量は同じか少なめです。便をしたくても出ない「しぶり」が起きることも。

体重はあまり減らず、大腸での出血は明るい赤の血便が出ます。

 

犬が下痢になってしまう原因は?

犬が下痢になってしまう原因

下痢の原因により危険度が変わってきます。
緊急性が高いのは、異物や人間用の薬、中毒のある食べ物の誤食/腫瘍/重度の膵炎や胃腸炎/子犬の感染症などです。

 

注意すべきものは、雑草などの拾い食い/食物アレルギー/慢性腸炎/細菌やウイルス、寄生虫の感染症などです。
危険が少ないのは、食べ過ぎ/食べ物の変化/ペットホテルや引越しなど環境変化のストレス/消化が悪い食事などです。

 

食事が原因で下痢になってしまう

フードの変更や食べ過ぎ、無分別な食事などによって下痢を起こすことがあります。食事を見直し、1~2日で改善がみられないときや嘔吐などの症状がある場合には、動物病院を受診しましょう。

 

また、特定の食事や食材によって下痢を繰り返す場合には、食物不耐性や食物アレルギーの可能性が考えられます。早めに動物病院を受診しましょう。

 

ストレスが原因で下痢になってしまう

長時間のお留守番や慣れない来客、近隣での工事、ペットホテルでのお泊まりの後などに下痢を起こした場合には、ストレスが原因の可能性があります。思い当たる節がある場合にはできる限り取り除いてあげましょう。

 

多くは1~2日で改善しますが、続く場合や嘔吐を伴う場合には動物病院を受診しましょう。

 

異物誤飲や誤食で下痢になってしまう

食べ物でないものを誤食してしまった場合や、人用の薬・サプリメントの誤食、ゴミ箱や三角コーナー内の傷んだ食べ物の盗食などが原因で下痢を起こす場合があります。

 

嘔吐を伴うことが多く、誤食した内容によっては緊急の対処が必要なケースもあります。早めに動物病院を受診しましょう。

 

ウイルスによって下痢になってしまう

パルボウイルス、コロナウイルス、犬ジステンパーウイルスなどのウイルス感染が原因で、下痢を起こすことがあります。

免疫力の弱い子犬や高齢犬などで重症化しやすいため、注意が必要です。これらのウイルスはワクチンで予防できるので、適切な時期のワクチン接種が重要です。

 

寄生虫によって下痢になってしまう

母犬から子犬へ胎盤や乳汁を介して感染する「回虫」や、土壌などから感染する「鞭虫」「鉤虫」、カエル・ヘビ・トカゲの捕食により感染する「マンソン裂頭条虫」、ブリーディング施設やペットショップでの感染例が多い「ジアルジア」「コクシジウム」「トリコモナス」などの寄生虫が原因で、下痢を起こすことがあります。

 

便に虫が検出される場合もあるので、病院を受診する際には便を持参すると診断の手がかりとなります。

 

細菌によって下痢になってしまう

クロストリジウムやカンピロバクター、サルモネラ、大腸菌などの細菌感染が原因で下痢を起こすことがあります。

これらの多くは、健康な犬の便にもみられますが、腸内で毒素を産生したり、腸内細菌のバランスが崩れることで下痢を引き起こす菌が過剰に増殖することがあります。

 

血便を伴うことも多く、重度の場合は発熱や脱水を引き起こすこともあるので、早めに動物病院を受診しましょう。

 

その他の原因について

膵炎や膵外分泌不全などの膵臓の病気や、肝臓・胆嚢の病気、腎臓病、副腎皮質機能低下症、腫瘍、子宮蓄膿症など多くの病気に関連して、下痢を起こすことがあります。

 

下痢が長く続いていたり、血便が出たり、元気や食欲に異常がおこる場合もあります。早めに動物病院を受診しましょう。

 

下痢の危険度について

下痢の危険度

犬の下痢はさまざまな原因で起こり、すぐに病院へ連れて行った方がよいものから、少し様子をみても良いものまで緊急度もさまざまです。

 

緊急性の高い症状(すぐに病院へ)

  • 水のような下痢を頻繁に繰り返す
  • 嘔吐がある
  • 便に血が混ざる(血便)
  • 便が黒い(黒色便)
  • 食欲や元気がない
  • 体重が減っている
  • 3日以上下痢が続いている

 

これらの症状がひとつでもみられる場合には、ウイルスや寄生虫などの感染症や薬・異物の誤飲、腫瘍、重度の膵炎や胃腸炎などの病気のサインの可能性があります。

中には急激に悪化してしまう場合もあるので、早急に動物病院を受診しましょう。

 

様子を見てもいい下痢は?

緊急性の低い症状(2~3日様子をみてもよい)

  • 下痢の頻度が少ない
  • 血便はない
  • 嘔吐はない
  • 元気や食欲はいつも通り

 

下痢以外にこれといった症状がない場合には、フードやおやつの変更や食べ過ぎ、ストレスなどのよる一過性の下痢である可能性が高いです。

思い当たる原因があれば取り除いてあげ、1~2日安静にして様子をみてもよいでしょう。ただし、嘔吐など下痢以外の症状がみられたり、下痢がなかなか治らない場合には早めに動物病院へ。

 

犬の下痢がゼリー状の場合に考える原因は?

犬の下痢がゼリー状の場合に考える原因

ゼリー状の便は「粘液便」とも呼ばれ、大腸に異常があるときに起こる下痢の特徴です。

大腸は体に必要な水分を吸収する役割を持ち、大腸に出血がある場合には明るい赤色の血便がみられます。

排便回数が増えたり、排便の姿勢をとっても便が出ない「しぶり」がみられることもあります。

 

ゼリー状の下痢を起こす原因は、フードやおやつの変更や消化の悪い食事、環境の変化によるストレスなど一過性のものがほとんどですが、稀に病気が原因でおこる場合もあります。

 

犬の下痢がゼリー状の場合に考えられる病気

上記のような食事やストレスなどの原因に加え、炎症性腸炎や腫瘍、副腎皮質機能低下症(アジソン病)などの病気が潜んでいる場合があります。この場合、下痢は3日以上長く続くことが多く、食欲や体重に変化がみられたり、嘔吐や血便を伴うケースも少なくありません。

 

犬の下痢がゼリー状なときに必要な対処法は?

食事が原因で下痢をしているときの胃腸は敏感になりがちなので、腸の中を消化物が通るだけで刺激となり、下痢を繰り返しやすいです。そのため、半日程度絶食させて胃腸を休ませてあげると回復を早められる場合があります。

 

絶食後は消化の良いフードを少量ずつ再開してください。ただし、子犬や持病のある犬の場合は、絶食が悪化の原因となってしまう場合もあるので注意が必要です。

 

また、脱水を防ぐためお水は絶やさず置いてもらいますが、冷たすぎる水や一気飲みは避けましょう。

市販の下痢止めは、原因により使って良い場合と悪化を招く場合があるので自己判断での使用はせず、動物病院を受診しましょう。

 

家での処置は?

家での処置

半日〜1日絶食で胃腸を休ませて回復を助けます。水分は常温の水を少しずつ与えます。嘔吐があるときは水も控えてまずは動物病院へ。

絶食後はドライフードをふやかすなど消化の良いものを、少しずつ様子を見てあげます。食欲があっても下痢が治まるまで、絶食か、普段の食事以外は与えないようにしましょう。

市販の下痢止めは、細菌などの排出を遅らせてしまうので、感染症の場合には使わないでください。

 

犬が下痢にならないようにする予防法を紹介

犬が下痢にならないようにする予防法

  • 一般的な下痢は、フードやおやつが合わない、食べ慣れないものを食べたなど、食事が原因となることが多いです。
    そのため、年齢や体質に適した食事管理は非常に重要です。フードを変更する際には少しずつ混ぜながら段階的に切り替えるとよいでしょう。
  • ウイルス性の下痢の多くはワクチンで防ぐことができますし、寄生虫には駆虫薬が有効です。定期的な予防を心がけましょう。
  • お散歩中の拾い食いや盗食、誤食は緊急性を要する事態に発展する恐れがあるので、誤食グセのある子は十分に気をつけましょう。

 

まとめ

まとめ

犬の下痢はさまざまな原因で起こり、重症度にもばらつきがあります。嘔吐や発熱がなく元気な場合には、一過性の下痢であるケースも少なくありません。この場合は2~3日おうちで安静にして様子をみても、問題のないことがほとんどです。

 

一方、緊急性を要する重度の胃腸炎や膵炎などの場合には、下痢の他に嘔吐や食欲不振などの症状がみられることが多く、様子をみているうちにどんどん悪化してしまう場合もあります。

日ごろから犬の様子や便の状態・回数などをよく観察して、少しでもおかしいなと思ったら動物病院を受診するようにしたいですね。ペットの診療費用は人間と違い、全額自己負担のためそれなりに費用がかかります。この機会にペット保険を検討してみませんか?

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