犬の生理(ヒート)とは?獣医師が解説
避妊手術を受けていない女の子のワンちゃんには、「ヒート」と呼ばれる人の生理のようなものが定期的におとずれます。
ただし、ヒートが起こるしくみは人の生理とは異なります。
症状によっては飼い主さまが対策すべきこともあるので、ヒートのおとずれる時期や周期、症状について知っておきましょう。
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犬の生理(ヒート)とは?
ワンちゃんのヒートは正確には「発情期」と言い、人の生理とはさまざまな面で異なります。
では、ヒートの特徴を一つずつ見ていきましょう。
人の生理と犬の生理(ヒート)の違い
人の生理は排卵後に妊娠が成立しなかった場合におとずれ、妊娠できる期間が終わったことを示します。
子宮内膜が剥がれ落ちて体外に排出される際に出血がみられ、痛みを伴います。
それに対しワンちゃんのヒートは排卵前におとずれ、妊娠できる期間に入ったことを示します。
ヒートの出血は子宮内膜が厚くなって充血することで起こり、人の生理痛のような痛みはないと考えられています。
人の場合、生理はある程度の年齢になるとなくなりますが、ワンちゃんの場合は避妊手術を受けない限り発情がこなくなることはありません。
犬の生理(ヒート)がはじまる時期
ワンちゃんは生後6か月から12か月くらいで性成熟を迎えるので、はじめてのヒートも同じくらいの時期におとずれることが多いです。
ただし個体差もありますし、小型犬の場合は少し早かったり、大型犬の場合は少し遅かったりすることもあります。
犬の発情周期と期間
ワンちゃんには「発情周期」というものがあり、発情前期⇒発情期⇒発情休止期⇒無発情期の4つの期間に分けられます。
はじめてのヒートと同じように発情周期にも個体差がありますが、半年に一回から一年に一回くらいのペースで発情期がくることが多いです。
犬の生理(ヒート)で見られる症状
発情前期の1か月半くらい前から、少しずつ外陰部が腫れてきます。
発情前期に入るとはっきりわかるくらい外陰部が腫大し、発情出血がはじまります。
外陰部を気にしてなめる、落ち着きがなくなる、頻尿になる、食欲が落ちる、元気がなくなる、散歩を嫌がるといった症状が出ることもあります。
発情出血が終わって発情休止期に入ると、性ホルモンの影響で「偽妊娠」という状態になることもあります。
妊娠していないのに毛布やタオルを集めて巣作りをしたり、ぬいぐるみを自分の寝床に持ち込んで守ろうとしたり、乳腺が張って乳汁が出たりします。
通常は1か月から2か月くらいで落ち着くことが多いですが、偽妊娠の間はワンちゃんも気が立ってストレスを感じているので、発情の度にそのような状態になる場合は避妊手術を検討するのも手かもしれません。
犬の生理(ヒート)が来ないときに考えられる原因とは
毎年必ずこのタイミングでヒートがくる!と予測することは難しいですが、避妊手術を受けていない限りヒートがこないということはありません。
あまりにも長期間こない場合はホルモンバランスが乱れている可能性もあるので、動物病院に相談してみましょう。
また、出血量が少ないとワンちゃん自身がなめてしまって、飼い主さまが気付かない間にヒートが終わっていることもあります。
歳を重ねると出血量が減ったり、発情周期が不規則になったりして、さらに気付きにくくなるかもしれません。
犬が生理(ヒート)のときの対処法
ヒートのときに飼い主さまが一番悩まされるのが、発情出血です。
出血が多い場合は、次のような対策をしてみましょう。
サニタリーパンツ(おむつ)をはかせる
おむつをはかせることで、床や家具が汚れてしまうのを防げます。
さらに、お散歩のときなどはほかの飼い主さまにヒート中であることを気付いてもらいやすくなります。
ただ、おむつをはくのを嫌がる子もいますし、長時間はいていると蒸れたりかぶれたりしてしまうこともあります。
パンツタイプやサロペットタイプなどおむつにもいろいろな種類があるので、ワンちゃんのストレスにならないものや蒸れにくいものを選びましょう。
外陰部を清潔に保つ
免疫力が低下しているヒート中は、感染を防ぐためにも外陰部を常に清潔に保っておく必要があります。
ワンちゃん自身がなめてきれいにしていれば特別なお手入れは必要ありませんが、出血量が多くて汚れている場合は、皮膚を傷つけないようにぬるま湯で洗ったり、濡らしたコットンや犬用のウェットティッシュで優しく拭いたりしてあげましょう。
毛が長い子は、外陰部の周りの毛をカットしてあげるとお手入れも簡単になります。
シャンプーはなるべく避ける
ヒート中は免疫力が落ちる子や、体調が優れない子もいます。
お風呂嫌いの子にとっては体力を奪われるだけではなく大きなストレスになってしまうので、シャンプーは体調が安定しているときに行いましょう。
ほかのワンちゃんとの接触を避けるために、トリミングサロンの利用も極力控えた方がよいでしょう。
メリット・デメリットを考慮して避妊手術も検討しよう
ヒート対策の一つとして、避妊手術があります。
避妊手術はほかにも多くのメリットがありますが、デメリットもしっかり知ったうえで検討してみましょう。
犬の避妊手術を行うメリット
避妊手術を行うことで、ヒートによる体調不良やストレスをなくしてあげることができます。
飼い主さまとしても、発情出血やほかのワンちゃんとの接触に気を使わなくて良くなるのは、大きなメリットですよね。
また、避妊手術を受けることで子宮や卵巣の病気を予防できます。
子宮蓄膿症などは命に関わることもあるので、100%予防できれば安心ですよね。
子宮蓄膿症の手術は避妊手術とやることは同じですが、若くて健康なときに受ける避妊手術と、病気になってから受ける手術とではリスクの大きさやワンちゃんにかかる負担が全然違います。
犬の避妊手術を行うデメリット
避妊手術のデメリットとしては、全身麻酔のリスクがあげられます。
動物病院では術前にしっかり検査を行って麻酔ができる状態であることを確認しますが、リスクを0にすることはできません。
また、生殖に使うエネルギーを消費しなくなるため、太りやすくなる子もいます。
犬の避妊手術を行うタイミング
避妊手術のタイミングに決まりはありませんが、体がある程度成長して体力がついた生後6か月あたりを目安に行うことが多いかと思います。
若いうちに避妊手術を行うことで乳腺腫瘍の発生リスクを下げられるので、手術を受けると決めている場合は早めに動物病院に相談しておきましょう。
関連記事:避妊・去勢のすすめ
犬の生理(ヒート)に関する注意点
ヒート中に飼い主さまが注意するべき点もたくさんあります。
お散歩やお出かけ
体調が優れないときは無理にお散歩に連れ出さず、いつもより歩く時間を短くしましょう。
体調に問題がなければ普通に外出しても大丈夫ですが、ヒート中は性ホルモンの影響で雄犬を興奮させてしまいます。
ワンちゃん自身も気が立っていたりするので、ほかの子とのトラブルを避けるためにも、ドッグランなど不特定多数のワンちゃんが集まる場所は避けて、お散歩も人の少ない時間やコースを選ぶのがおすすめです。
生理中のワクチン接種は避ける
ヒート中は免疫力が低下していたり、体調も本調子ではなかったりする可能性があります。
ワクチンは「絶対にこの日に受けないといけない!」というものではないので、体調が万全のときに受けるようにしましょう。
同居犬がいる場合は生理中のトラブルに気をつける
普段は仲睦まじいワンちゃん同士でも、発情中は神経質になったり攻撃的になったりして、ケンカをしてしまうことがあります。
また、未去勢の雄のワンちゃんが同居しているおうちでは、望まない妊娠を避けるためにもお互いを接触させないように注意が必要です。
偽妊娠の症状があるときは刺激しない
偽妊娠の兆候がみられるときは、ワンちゃんも神経質になってイライラしている可能性があります。
飼い主さまを攻撃することもあるので、巣作りの邪魔をしたり無理矢理ぬいぐるみを取り上げたりせず、好きなようにさせてあげましょう。
出血が長期間続くなら動物病院を受診する
個体差はありますが、発情出血は約2週間前後で落ち着いてくることが多いです。
いつまでも出血のようなものが続いているようであれば、ほかの病気が隠れているかもしれません。
たとえば子宮蓄膿症では、陰部から血混じりの膿が出てくることがあります。
膀胱炎や尿石症による血尿も、発情出血と勘違いしてしまうことがあります。
出血が長期に渡って続く、ほかにも気になる症状がある場合は早めに動物病院に相談しましょう。
まとめ
ワンちゃんのヒートは病気ではありませんが、体調に変化をきたすことも多くあります。
正しい対策をしつつ、ワンちゃんと飼い主さまのストレスを減らすためにも、ぜひ避妊手術を一つの選択肢として検討してみてください。
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